背負ったグラフィックは速さの証明書
走り優先のメイキングに美しさへの拘りが息づく
ベース車両は、オーナーの“やなぎ”さんが社会人になる直前に知人から7万円で購入した個体。しばらくはマイペースにイジりながら走りを楽しんでいたが、予期せぬクラッシュを機に方向転換。どうせ直すなら…と、大幅なリメイクを決意して現在の仕様へと進化させたという。
「とくにシビックに強い拘りがあったわけではなく、7万円という安さに釣られましたね(笑)」と、愛車との出会いを振り返る。
細部を見ていく。エンジンルームは群馬県伊勢崎市に店舗を構える“HERO”が製作。エアコンやパワステといった快適装備は全て撤去した上で、ワイヤータックやシェイブドベイの妙技を炸裂させ、見せるためのクオリティも極めた。
パワーチューンにも余念なく、エンジン本体はB16AからEK9などに搭載されたB16Bへとスイッチ。内部も戸田レーシング製の鍛造ハイコンプピストンやBカム、ナプレックによるヘッド面研など徹底的なポテンシャルアップが図られている。制御はアペックスのパワーFCによって行い、およそ200psを絞り出す仕様だ。
インテークには、チューニングエンジンにも対応できる容量と最適な内部構造を持つスカンク2製のインマニを投入。エキゾースト環境は、上流部から戸田レーシング製EXマニ、スプーン製センターパイプ、スプーン製N1マフラーというレイアウト。
ヘッドカバーはEFシビックのものを流用。これは出光カラーに仕様変更の際に導入されたアイテムだ。聞けば、当時の資料を見ると実車の出光シビックもEFのヘッドカバーを採用していたのだとか。
サスペンションはアペックスのN1ダンパー(F22kg/mm R18kg/mm)を軸に構築。ブレーキにはディクセルのキットを用いて、前後にEK9用のキャリパーとローターを投入している。ホイールはエンケイのRPF1RS(8.0J+28)で、タイヤはアドバンA050(FR205/50-15)。タイヤレターに絶妙に被る車高が、やなぎさんの辿り着いたベストセッティングだ。
室内は最低限の内張りのみを残したドンガラ&シングルシート仕様。車重は900kg程度というから恐れ入る。シートはブリッドのジーグIII、ロールケージはサイトウロールケージ製の11点式だ。
ミッションはATSのクロスギヤキットを組み込みつつ、IRPのシフターを合わせてクイックシフト化。その後方に確認できるのは、チェイスベイ製のブレーキバランサーだ。
そして特徴的な出光カラーについては、シビック入手前から憧れがあったそうだが、実際にこのカラーリングの施工を決意したのは2022年に入ってからだったりする。
その理由について、やなぎさんは「シビックの出自を考えれば、出光カラーが似合うのは分かっていました。でも、実際にサーキットで速い車両でやってこそ意味があると思ったんです。なので、自分の中でハードルを作ったんです」と語る。
自らに課したハードル、それはずばり「日光サーキット38秒」である。40秒切りが一つのステータスになっているステージであることを考えれば、かなりの難関だ。しかも、走りに全振りした生粋のサーキットスペックではない。
しかし、諦めずにセッティングを見直しながら走り込みを続けた結果、2021年のタイムアタックシーズンで見事に目標を達成。晴れて、出光カラーへの仕様変更に踏み切ったのである。
見掛け倒しではなく、真に走りを予感させるマシンメイク。画竜点睛とも言うべき、最後の重要なピースは、どこまで行っても尽きないドライビングの追求にあるのだ。
PHOTO:土屋勇人 Hayato TSUCHIYA
Source taken from: https://motor-fan.jp/weboption/article/79572/?utm_source=pocket_saves