最期の時間…認知症進む19歳愛犬の幸せ願い“老犬ホーム”に 悩んだ夜鳴きも減った 介護、看取りの現場

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ペットの長寿化で、現在、犬の平均寿命は14歳~15歳といわれている。それに伴い、ニーズが増しているとされるのが犬の介護、看取(みと)りを行う「老犬ホーム」だ。2022年、長野県安曇野市にオープンした老犬ホームは県外からも受け入れている。施設を訪ねると、「愛犬の幸せ」を願う飼い主と寄り添うスタッフの姿があった。

新潟県の糸魚川市に住む佐藤江利子さん。月に1度、車で2時間かけて安曇野市に通っている。

愛犬をホームに預ける佐藤江利子さん:
「もう雪の降る時から来てるから、だんだん歩けなくなる、やせてくる。(会えるのは)うれしいけど、複雑」

佐藤さんの愛犬、19歳の柴犬「ティム」だ。

ここは老犬ホーム、「ドッグステイハウス Dog’s」。「ティム」は2022年12月から預けられていて佐藤さんは、毎月、会いに来ている。

佐藤江利子さん:
「おはようございます。ティムちゃん」

ちょうど食事中。いつも通りの食欲で佐藤さんをホッとさせる。

佐藤江利子さん:
「食べられた?よかったね」

1年前にオープンした施設。

元教員の宮脇史さんが、退職金をつぎ込んで開業した。きっかけは保護ボランティアの経験だ。

ドッグステイハウス Dog’s・宮脇史オーナー(2022年5月):
「捨てられて(保護)施設に来る犬が多かった。『もう世話ができない』介護が必要な愛犬を、手放す飼い主が多いことが悲しかった」

冷たいケージで最期を迎える犬たち。

宮脇さんは心を痛める一方、介護などで追い詰められていく飼い主にも思いをはせる。

ドッグステイハウス Dog’s・宮脇史オーナー(2022年5月):
「(飼い主が)追いつめられたときに、衝動的になってしまう気持ちもわかる。心も時間も余裕ができるような、それが犬を救うことにもつながる」

佐藤さんと「ティム」は18年ともに暮らしてきた。

佐藤江利子さん:
「(思い出は)旅行、キャンプ、バーベキュー、海、川、ボート…。実の子と同じ」

10年前、夫が他界。乗り越えることができたのも、「ティム」がいたからだ。

その「ティム」を老犬ホームに預けた理由は―。

佐藤江利子さん:
「薬を飲ませても長くて4時間、短くて1時間しか眠ってくれず、抱っこして押し入れや車に入ったり。いつまで続くのかと思うと…」

2022年の秋、突然、始まった「夜鳴き」。認知症が進んでいた。

佐藤江利子さん:
「薬もだんだん強くなり、見ているのがかわいそうなくらいに。もう(自宅での介護を)やめようと」

国内で登録する施設は200カ所余り。

協会によると、預ける理由は6~7割が飼い主の入院や死亡、海外転勤など。

残る3~4割は「夜鳴き」や「介護と生活の両立」という。

宮脇さんは防音壁などを備え、大型犬の介護をしやすくした広めの新しい犬舎に「ティム」を迎えた。

すると、佐藤さんがあれほど悩んだ「夜鳴き」が減った。

ドッグステイハウス Dog’s・宮脇史オーナー:
「(夜鳴きが減ったのは)何ででしょうね、私も不思議なんです。昼間、ドッグランで他の犬とワイワイしているので疲れて眠るのか、安心して眠るのか」

預かり料金は長期の「ティム」の場合で、ひと月8万8000円(税込※医療費は別途)。

施設の運営は厳しく、ボランティアのスタッフが支えている。

血行促進などのため、蒸したハーブでマッサージ―。

ボランティアのスタッフ:
「あったかいねー、気持ちいいなあ」

心がけているのは、犬と飼い主に寄り添うこと。

犬たちの様子を見極めてケアをし、飼い主にはホームでの様子を動画で送っている。

(宮脇さんのSNSでのやりとり)
「ティムさんの歩いているところを1人で動画に撮るのが難しくなってきました。
顔が前よりさらに下がってしまい…」

(佐藤さんのSNSでのやりとり)
「車いすをつるベルトが1本使ってないのがありましたよね。何とか利用できないかな?」

ドッグステイハウス Dog’s・宮脇史オーナー:
「トイレ、おしっこ出た、歩きたい、喉が渇いた、ごはん食べたい、寂しい。そのときに、すぐ対応するようにしています」

オープンから1年。これまでにショートステイも含め75匹を預かり、1匹を看取った。

5匹は飼い主の元で最期を迎えたという。

施設に来て半年。「ティム」はもう、自力では歩けない。

佐藤江利子さん:
「ひと月ごとに会うたび、ものすごい老化が進んでいて、(1カ月は)人間でいう半年くらいになるのかな。あー、体力落ちたんだなあ、すごくショックな気持ちもある。(ホームに)来るたび少し怖いんです」

足が弱っても歩きたがる様子を見せるという「ティム」。

そこで、佐藤さんは首を支えられるようなレンタルの新しい車いすを手配中だ。

その日が来るまで、施設で幸せに過ごしてほしいと願っている。

愛犬をホームに預ける佐藤江利子さん:
「ここは(ティムが)好きなときに、好きなように歩ける(場所)。(預けて)最初は寂しかったけど、『ティム』が幸せならそれは全然大丈夫」

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